住宅探訪vol.01 ハイサイドライトの家を訪ねる -後篇-

秋慎一郎 L_DESIGN 建築設計事務所
秋慎一郎
L_DESIGN 建築設計事務所
コスト的にも構造的にも、
在来木造ではできないことができるのではという可能性を感じた
イメージ:南側全景。左手の階段でアプローチする。地階が駐車場で、上階の1階が玄関がある。
南側全景。左手の階段でアプローチする。地階が駐車場で、上階の1階が玄関がある。
イメージ:1階中庭。上階が2階のテラス。
1階中庭。上階が2階のテラス。
この「ハイサイドライトの家」は今から10年ほど前から計画されていた。「吹抜け部分などで木造を設計すると火打ちがどうしても出てくるのだけれども、面としての硬さがとれているSE構法(SE工法)でやるとそれがいらないんです。コスト的にも構造的にも在来木造ではできないことができるのではという可能性を感じました。」と当時を振り返る。「火打ちの話もそうですが、こうした構造の話は、ある構造家に構造計算をお願いするとデザイン的にいらない構造部材がとれるというのですが、それは計算上の問題で在来木造が本当にその通り動くという確証は誰にもないのです。それにそれはコストのかかる特別なものです。ところがSE構法(SE工法)では、デザイン的にも構造的にもクリアしたいことが計算され確実にできるんです。ですから安心して設計者として選択できました。」と続けた。確かにコストを掛ければ、今の技術を使い思い通りの建築物ができる。できるが住宅ではどうであろう。100人いたら数名の方はそうした住宅を建てられるかもしれないが、残りの90数の方は現実的にはそうはならないだろう。「コストを掛けなくとも、できるだけきれいで手間のかかった住宅に住みたいと思っている方はたくさんいらっしゃると思うのです。そうした住宅に住みたいといわれる方に設計者として答えていきたい時の答えとしてSE構法(SE工法)を選択しています。」と秋さんは答える。
イメージ:2階キッチン
2階キッチン
イメージ:1階主寝室より子供室を見る。
1階主寝室より子供室を見る。
イメージ:1階玄関を見る。
1階玄関を見る。
間取り 東西断面図 縮尺 1/150
図面
建主様がいて希望があり、敷地があり、条件がある。それらをまず最大限生かそうと考えるのが設計の入口となる。そこが見えてくると、何かを犠牲にするのではく、全体のバランスに注意しながらもリビングの快適性を注意深く上げていくというような、よりよくなる可能性のある場所をより伸ばしていくような手法がみえてくる。そうした現状ではSE構法を選択するのがひとつのベストアンサーであるというのが秋さんの話だ。「これしかない」という状況を「これ以上だ」という状態で成立させているのは、そこである。「条件の厳しい都市の中で住宅をつくる時に、何かしらダイナミックなところをつくることで、その予算で普通に設計していくことを越えたよりよい住宅になっていきます。建主様のご要望を実現するだけでなく、それを伸ばしてゆく。
建主様の知らない住み方も家族の在り方があります。これらを積み重ねていくと、コスト的な部分も理解して頂けます。」という秋さんの話は説得力がある。すでに秋さんは20件近くの住宅をSE構法(SE工法)でつくっている。限られた条件で平面的に設計したいときの限界を、上にぬくというダイナミックなポイント=カーテンのいらない開放的な開口をつくることで突破する。そのためにはSE構法(SE工法)の技術と実績が必要なのである。秋さんはこうも言う「SE構法(SE工法)を構造が強いだけでとらえるとそれは魅力の一部でしかありません。これは手が届く範囲でつくれる質の高い空間を実現するために必要なものなのです。」。私はこれまで1000件を越える住宅の現場を訪れている。今回のこの住宅でも感じたことではあるが、質の高い空間というものを、それほど特別なこととするのではなく、みなが共有できる価値として理解されてくる時代になってきたと感じている。

ライター:佐藤勤