住宅探訪vol.01 ハイサイドライトの家を訪ねる -前篇-

秋慎一郎 L_DESIGN 建築設計事務所
秋慎一郎
L_DESIGN 建築設計事務所
コスト的にも構造的にも、
在来木造ではできないことができるのではという可能性を感じた
イメージ:2階リビングよりダイニング方向を見る
2階リビングよりダイニング方向を見る。適度に回された壁面が、狭小敷地の都市型住宅にも関わらずプライバシーを確保しながら開放感を与えている。
年末や年度末の様に、年に何度か竣工物件数が増える時期がある。転居のタイミングを計り建設するからだが、それぞれそこに住まれる方が中心にいる。さまざまな夢の住宅がそこにはある。帰りたくなる住宅。ずっとそこにいたい住宅。人を招き同じ時間を楽しみたくなる住宅。それは家族の数だけ存在する。しかし現実には、それぞれの生活や趣味などの希望に沿いながらも、予算や取得した敷地から導かれる条件とのある種のバランスをとった結果の住宅となる。郊外型、都市型あるいは老若男女の違いにかかわらず、建主様の希望と手元にある条件がスタートラインである。条件が同じようであっても、実現される住宅の価値はさまざまになる。建築家はみな、その何かのために設計に明け暮れる。
設計を重ねて行くとその土地のもっているポテンシャルが見えてくる。地勢が見え、居室相互の関係や外部との関わりなどがいくつかの糸口としてはっきりとしてくる。さらにそれまでの経験をもとに設計を繰り返し、法規や構造を想定しながら具体化へと向かう。やがて、この敷地に住む場合のある限界が訪れる。でも、設計というのは予算が決まり希望条件が定まったこの時からが勝負である。つまり、プロとして見えてくる限界を認識しながらも、自身を含めてこれまでの建築の作られ方を越える構想を持とうと努力するタイミングである。今の時代のこの家族の希望と条件にあった住宅は、どれもが未だかつてない住宅なのである。それでは限界を超える可能性と何であろうか。例えばこの都市型住宅では、ヒントは在来工法を越えたところにあるという…
間取り 南北断面図 縮尺1/200
図面
イメージ:2階南側のハイサイドライトと呼ぶにはあまりにも大きい開口を見る
2階南側のハイサイドライトと呼ぶにはあまりにも大きい開口を見る。
イメージ:2階テラス
2階テラス
今回訪れたのはL_DESIGN建築設計事務所を主宰する秋慎一郎さんの設計による「ハイサイドライトの家」である。周囲は住宅地であるが都市部であり、狭小住宅が建て込んでいる。秋さんは「予算がこれしかなかったので、こうなっちゃいましたというところからスタートしています」と言いながら案内をしてくれた。
敷地は東入りである。奥に向かって上がって行く傾斜地で、駐車場レベルは地階で、その脇の階段を上がると1階となる。RC造の地階の上に2階建てのSE構法(SE工法)による構造体が載っている。80平米の敷地に40平米の家屋が配置され、地階に駐車場と自身の事務所と水回り、1階に中庭と玄関、個室スペース、2階に一体のLDKに広めのバルコニーという作りである。
先ほどの階段を上がりきり右手に壁をくぐるとアプローチとなる吹き放ちの中庭に出る。ファサードを構成する壁の内側に入っただけで都市の賑わいから隔てられた、プライベート感の高い空気感をもつようになる。奥左手の玄関から屋内に入り、反時計に回り込む。必要に応じて引き戸で間仕切る1階は、外部である中庭との一体感があり、
実際以上に広さを感じさせてくれる。さらに階段を上がると2階のほぼ中心にでてくる。法的に可能な限りの空間が設定され、そこにSE構法(SE工法)による片流れの屋根が載せられている。南面は隣家等との関係から計算された壁が立ち上がり、その上部には可能な限りの大開口(ハイサイドライト)が採られている。夏季には太陽光をコントロールするものの、冬季はその恩恵を満喫できる。階段をあがり見上げれば望む以上に大きな空を感じることができるのである。が、水平方向の体感はやや違う。1階はプライバシーが確保されかつプライベート感がある個室エリアだったのに対して、2階は同じくプライバシーが視線のコントロールでされながらも、都市部にいることを忘れさせる開放感が得られている。それらは共に、40平米のスペースをいかに建築的な空間に仕上げていくのかという建築家の構想力によるものであろう。現場に立つと、限られた予算による、限られたスペースでの構想と現実のせめぎ合いが随所に見られるが、そのいずれも丁寧に対応がされており、そうしたことを補完するのに役立っている。バブル崩壊を生き抜いた同世代のこうした仕事ぶりはうれしいものである。
間取り 地階平面図 縮尺1/200 1階平面図 2階平面図
図面
それらは共に、40平米のスペースをいかに建築的な空間に仕上げていくのかという建築家の構想力によるものであろう。現場に立つと、限られた予算による、限られたスペースでの構想と現実のせめぎ合いが随所に見られるが、そのいずれも丁寧に対応がされており、そうしたことを補完するのに役立っている。バブル崩壊を生き抜いた同世代のこうした仕事ぶりはうれしいものである。

ライター:佐藤勤